数的処理のコツ「判断推理”集合”」
① 集合の基礎
(1) 集合の定義
「集合」とは「いくつかのもの」からなる「集まり」のことです。ここでいう「いくつかのもの」というのは、数学では「3,4のようなもの」や「とりうる範囲」のことを指します。そして「いくつかのもの」の1つ1つを「要素」と呼びます。
「集合」という考え方は数学を考えるうえで、どの分野でも出てくる重要な概念です。難しい数学の問題を考える上では、集合と言う概念なしでは考えることは不可能です。と言っても、われわれが普段使っている言葉を組み合わせることで、数学での「集合」も理解することができます。
言葉遊びだったり、数字遊びから始めてみましょう。
(2) 集合の表し方
始めは慣れないかもしれないですが、数学では集合を次のように表します。
A={2,4,5,9,10},B={a|aは整数,-4<a<2},U={x|xは実数},φ
上記の式で、「A,B,U,φを集合」と呼び「”2″だったり”x”だったり”a”だったりを”要素”」と呼びます。また集合の要素が1つもないものを「空集合」と呼び、記号「φ」で表します。
集合Bについて考えてみましょう。「あれ変だな?」と感じると思います。それもそのはずです。だって「-4より大きくて2より小さい整数って、-3,-2,-1,0,1」ですよね。だから集合Bを
B={-3,-2,-1,0,1}と表記してもいいのでは?と思いますよね。その通りです!ここが集合の最も大事な点の1つです。
別の集合を考えてみましょう。集合Cを、C={x|x^2-3x+2=0}とします。方程式を解くとx=1,2となるので、C={x|x=1,2}と表記してもよいのです。もちろん逆に考えることも可能です。以下のようにどのような表記をしても同じなのです。
D={x|xは1以上の整数}={x|xは自然数}={x|x=1,2,3,4,…}={x|xは整数で0.5以下ではない}
(3) 「解く」とは?
「解く」というのは「集合が同じもので”難しそうなもの”から”簡易なもの”にすること」です。難しいですよね?
このことが数学の問題を「解く」ということが「復元する」と言える所以(ゆえん)です。すなわち「解け」というのは「集合を要素を判りやすい形に復元せよ」という意味なんです。「数学で問題を解ける」のは「もともと答えがある」と考えることができ、せっせと色んな公式などを駆使して「復元」しているにすぎないのです。
歴史的にも、「哲学」から「論理学」,「論理学」から「数学」が誕生したことを考慮すれば、こういう理屈っぽいことが根底にあるのも納得できませんか?
② 「または」と「かつ」,”否定”
(1) 「または」と「かつ」の記号
「AまたはB」⇔「A∨B(通常はV次ではなくU字です)」
「AかつB」⇔「A∧B(通常はU字の上下さかさまです)」
「または」は「どちら(の要素)でもよい」,「かつ」は「どちらも満たしていないとダメ」というイメージです。
A={x|xは整数},B={x|x>0},C={x|x<3},{x|x<0}とすると
A∨B={x|xは整数},A∧B={x|xは自然数},A∧B∧C={x|x=1,2},B∨C={x|xは実数}
B∧C={x|0<x<3},B∨D={x|x≠0の整数},B∧D=φ,C∨D={x|x<3},C∧D={x|x<0}
となります。
例1…集合A,B,Cを次のように決める。A={a|a^2+a-2=0},B={a|a=-2,-1,0,1,2},C={a|a=2}
このとき、A∨B,A∧B,B∨C,B∧C,A∨C,A∧C,A∨B∨C,A∧B∧C を求めよ。
解答1…A∨B={a|a=-2,-1,0,1,2},A∧B={a|a=-2,1},B∨C={a|a=-2,-1,0,1,2}
B∧C={a|a=2},A∨C={a|a=-2,1,2},A∧C=φ,A∨B∨C={a|a=-2,1,0,1,2},A∧B∧C=φ
(2) 集合の”否定”
集合では「否定」を考えることができます。A={x|x<3}とすると、(Aの否定)={x|x≧3}となります。
(Aの否定)の集合を記号で表すと、「Aの上に横線を引いたもの」になります。ここでは集合の前に「¬」を付けます。
〇ド・モルガンの法則…¬(A∨B)=¬A∧¬B,¬(A∧B)=¬A∨¬B